失敗しない暗闇選びは、ココから始まる！

微かなリップ音とともに唇が離れて・・・火照った唇に夜の海風が触れた。
いくらみんな花火に夢中だからって・・・こんなところで・・・。
急に恥ずかしくなって・・・
「は・・・花火・・・花火見よう・・・？」
翔君からそっと身体を離して・・・大輪の光の花が彩る夜空へと視線を移した。
そんな俺に翔君はくすっと小さく笑って・・・それから俺の視線の先へと目を向ける。
光のシャワーがあたり一面に降り注いで暗い海を照らして・・・。
音は振動となって身体に伝わる。
「きれいだね・・・」
「うん・・・いっしょに見れてよかった・・・」
微笑みあって・・・翔君といっしょに夜空を見あげた。
翔君との思い出がセピア色に染まってしまうことがないように・・・。
こうしてずっと隣にいたい。
隣にいて・・・同じ時を過ごしていきたい。
翔君は・・・本当は俺が隣にいていい人じゃないのかもしれないけど・・・。
でも・・・この繋いだ手は離したくない。
翔君はどう思ってるんだろう・・・？
何を考えているのかわからない翔君の涼しげな横顔を、花火の光が照らしだす。
星空の下で一生・・・大切にする・・・そう言ってくれたけれど・・・。
一生・・・なんて・・・。
それは単なる口約束で、未来に確約のある関係じゃないことはわかってる。
確約・・・なんて、翔君の立場を思えば・・・望むべきじゃないって思う。
幸せそうな彼女の左手の薬指に輝いていた指輪。
永遠を約束するもの。
俺が望めないもの。
翔君といっしょにいたいのなら・・・望んじゃいけないもの・・・だ。
ふいに視線を感じて・・・そちらへ目をやると、思った通りの翔君の優しい瞳が俺を見つめていた。
「花火・・・見ないの・・・？」
躊躇うことなくまっすぐに見つめてくる翔君に・・・少し途惑う。
「見てるよ・・・」
翔君の指がそっと俺の顎をすくって・・・
「智君の瞳に映った花火を見てる・・・」
俺を覗き込んで恥ずかしげもなく、真顔でさらりとそんなことを言う。
他の人が言ったら呆れて笑ってしまいそうな、そんな歯が浮くような台詞も・・・翔君が言うと不思議と様になって・・・。
イケメンは本当にずるい・・・と思う。
一瞬・・・花火がやんで・・・ふいに辺りを静寂と闇が包む。
自分の心臓の音だけが・・・ドクドクと耳に・・・身体に響く。
めずらしく少し緊張した面持ちのイケメンが俺をじっと見つめるから・・・なんだか恥ずかしくなって、目を伏せようとしその時・・・
「智君・・・俺と・・・結婚してください」
信じられないような言葉が耳に響いて・・・
「え・・・？」
吃驚して・・・翔君を見返した。
翔君の真摯な瞳に吃驚顔の俺が映る。
「え・・・えっと・・・あの・・・」
突然のことに言葉が出てこない。
途惑う俺を翔君が少し不安そうに見つめる。
翔君を不安にさせたいわけじゃないけど・・・。
でも・・・。
結婚・・・それは永遠を約束する言葉のはずだから。
翔君、それを・・・俺に言ってもいいの・・・？
俺は・・・翔君のために、なんて答えればいいんだろう・・・。
『あ・・・そんなに押したら・・・』
『だって・・・見えない・・・』
『もうちょっとだけ前に・・・』
ふいに後ろでひそひそと話す声がして・・・
近くの観葉植物が不自然にぐらぐらっと揺れたかと思うと
『・・・ダメだって・・・あっ・・・』
小さな悲鳴とともに、ごろごろっと何かが転がり出てきた。
吃驚して暗闇の中、目を凝らす。
「ま・・・雅紀君・・・？和也君・・・潤君も・・・？」
なんで・・・ここに・・・？
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ごめんなさい・・・なかなか終わりません。
あともう少しだけおつきあいください。